性別発覚!!
「・・・姉さん、やっぱりよそうよ。」
幼げな声とは真逆な姿をした、鎧が言った。
その傍らには、なにやら書類に記入している、少年とも少女とも言いがたい者が一人。
「・・・いいんだよ!こうでもしないと合格なんて出来るわけないだろ!?
・・・これから俺のことを姉さん≠チて呼ぶな。」
そう言うと、書き終えたらしい書類を封筒に入れた。
そして、壊れるのではないかと思うくらい荒々しくドアを開けて出て行った。
それから数年後。
「・・・ね・・・いや、兄さん。僕あっちの猫がいそうな裏路地に行ってきたいんだけど・・・」
何年か前に姉さん≠ニ呼ばれていた者――エドワード・エルリックの傍らには、数年前一緒にいた鎧ではなく、少年がいた。
誰かを待っているようだが、その待ち人は一向に姿を見せない。
「待てよ・・・アル、さっきから俺の前を通る男、皆俺を睨んでいくんだ。」
アルと呼ばれた少年――アルフォンス・エルリックが苦笑交じりに答える。
・・・――まったく。にぶいなぁ・・・
「姉さん。あれは睨むんじゃなくて、見とれてるだけだと思うよ?姉さんに。」
アルフォンスがそう言うと、頬に朱が走る。
「っば、ばか!姉さんて呼ぶなって言ったろ!?それに、あれは絶対に睨んでる!」
「もう、いいじゃないか。ね・・・兄さんは僕の体も取り戻してくれたし、自分の手足も取り戻しただろ?
もう目的も果たしたんだからもう隠さなくても・・・っと、来たから僕はもう行くね。
晩御飯までには帰ってきてね。遅くなるんだったら電話してね?」
まるで母親のような言葉をかけて、アルフォンスは去って行った。
そして、アルフォンスと入れ替わりに息を切らした男が走ってきた。
「ったく!いつまで待たせりゃ気が済むんだ!てめえは!!!」
走ってきた男に向かって叫んだ。
どうやら待ち人はこの男だったらしい。
「すまない。急ぎの仕事が入ってしまってね。行こうか?」
「行こうか?じゃねえ!!俺はここに立っている間ずっと通り過ぎていく男に睨まれてたんだぞ!?」
さっきアルフォンスに言った同じような台詞を言う。
すると男は吹き出しそうになるのをこらえながら答えた。
「君の目つきが悪いからだろう。
さあ、着いてきたまえ」
「なんだと!?あ、こら待てよ!」
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目的地に着いても、エドワードの機嫌は一向に直らない。
それどころかどんどん悪化していった。
「なんで俺がただ図書館に行くだけでこんなめに遭わなくちゃいけないんだよ!
何時間待ったと思ってるんだ!!2時間だぞ!?2時間!!」
「仕方がないだろう。
最近セントラルでスカーらしき男を目撃したと言う情報が多数届いている。
一人になればそれこそ奴の思う壺だ。
それにスカーと遭遇した場合、焔の錬金術師と鋼の錬金術師、2人でかかれば拘束することは容易い。」
「捕まえることが目当てかよ!それに2時間も待たせといて安全もなにもねぇだろ!!」
「君はアルフォンス君と二人でいたではないか。」
確かにエドワードはこの男――ロイ・マスタングが来るまでアルフォンスと行動を共にしていた。
もしスカーが襲ってきたとしても、ひとたまりもなくはないだろう。
でも、さすがに2時間待つのはきつかった。
アルフォンスも痺れを切らしていたころだった。
「でもさ、大佐。雨の日無能じゃん。」
「・・・っ・・・今日は晴れている」
「途中で雨降ったらどうすんの?」
「そのときは・・・屋内の対戦に持ち込み・・・」
「被害大きいね」
「あとで直せばよかろう」
「誰が直すと思ってんだよ」
「それは・・・」
これはさすがに言葉に詰まった。
ロイ・マスタングは炎の練成を得意とする。
被害が広い範囲に広がれば、すべてを直すことは困難だ。
すると、直すのは誰になるか、自然と見当がつく。
「あーぁ・・・。なんで俺の護衛が大佐なんだよ・・・。
せめてホークアイ中尉とか・・・ハボック少尉とか!もっと有能な人にしてくれればいいのに・・・。
こんな無能な奴じゃなくてさぁ・・・」
「さ、さっさと本を読みにいきたまえ。時間がなくなるぞ」
適当にごまかして話を終わらせようとした・・・その時。
ガッシャーン!!
少し離れた場所でガラスの割れた音がした。
そして、二人の前に出てきたのは・・・スカーだ。
「鋼の錬金術師、焔の錬金術師、二人揃っているとは好都合!
神の代行者として裁きを下す」
「ちっ!なんでこう大佐の思惑どうりにいくんだよ!!」
エドワードは手を合わせ、厚い壁を練成する。
こんなもの一瞬で破壊されてしまうのだろうが、そんなことはどうでも良い。
これは少しばかりの時間稼ぎにすぎない。
「大佐!!外出るぞ!!」
「わかっている!!」
炎の被害を最小限に抑えるため、図書館の外へ出た。
が・・・
ザー・・・
外は生憎土砂降りだった。
「げ!!マジかよ!大佐!出てくんなよ!」
「・・・・・」
「・・・ってもう出てるし!!!」
ロイは雨に降られて発火布が湿ってしまった。
もうこれでお得意の炎は出せない。
このロイの状態を俗に役に立たないとか無能とか湿気たマッチと言う。
「雨か・・・。これは好都合。神の道に背きし錬金術師。滅ぶべし!」
「冗談じゃねえ!!
おい!行くぞ!!湿気たマッチ!!早くしろよ!!この無能!!」
「・・・」(ガーン・・・)
ロイはエドワードの言葉にショックを受け動けなくなってしまった。
その隙をスカーが見逃すわけがない。
「やめろ!!!!・・・・あ・・・やべぇ・・」
エドワードは錬金術でスカーの錬金術を相殺した。
・・・が。
その反動でエドワードのコートと中に着ていた上着が無残な姿に・・・。
そして地面に落ちてしまった。
エドワードはタンクトップ姿になってしまった。
そしてその胸には、男にあるはずのない二つの膨らみが。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「む!・・・鋼の錬金術師は女であったか・・・。
だが女であっても国家錬金術師に変わりはない。裁きを・・・」
「ふ・・・ふははははは!!!!!!!甘いな・・」
ドゴーン!!
さっきまでショックで動けなかった無能・・・基、ロイの方から突然炎と爆風がスカーを襲った。
エドワードはギリギリで壁を作って身を守った。
スカーは回避しようとしたが、距離が近かったのもあり完全にはよけきれずに、吹き飛ばされた上に少し火傷を負った。
「油断したな!!スカーよ!
こんなこともあろうかと予備の発火布を用意しておいたのだよ!」
空は、先程の土砂降りが嘘のように晴れていた。
そして、ロイの近くにはビニール袋が。
ロイは雨がやんだのを見計らってビニール袋に入れて濡れないように持ってきた予備の発火布を装着し、攻撃したのだった。
ドン!!
銃声が鳴り響いた。
銃弾はスカーの足を掠った。
そして車から二人が降りてきた。
「ホークアイ中尉!ハボック少尉!」
「・・・包囲しろ」
ロイがそう言うと、ホークアイ中尉とハボック少尉の後ろから大勢の武装した軍人たちが現れた。
すると、分が悪いと判断したのかスカーは包囲される前に去ってしまった。
「エドワード・・・君?」
さて。
残ったのはこの問題。
女性であることがばれてしまったエドワードはなんと言っていいかも分からず、ばれてしまったショックで今度はエドワードが固まってしまった。
「大将・・・いや・・・お嬢か?今までよくばれなかったなぁ」
タバコをふかしながらハボックが言った。
ロイはと言うと、不気味な笑みを浮かべてこう言った。
「まぁ、この事は書類不備と言うことにしておこうか。
中尉。少尉。この場にいる全員、他言無用だぞ!!」
と言うような感じでこの件は終了した。
だが、エドワードが大佐に重大な秘密を握られてしまったことは紛れもない事実だ。
そして、他言無用と言われれば言われるほど言いたくなるのが人の常。
一週間後にはセントラル住民すべてに知れ渡っていることは言うまでもない。
アルフォンスはもう隠す必要がないので安心していたが・・・・。
この変態佐が、この弱みをどう利用するのか・・・。
あの不気味な笑みから、とんでもない事になるのは間違いない。
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